カテゴリー別アーカイブ: 味噌のミソ

金山寺味噌のゆたかな知恵

抜けるような青空が少しづつ秋に近づくこの頃。
今年の夏は雨天の地域差がとても強く感じられました。

香川では晴れ間が多かったですが、関東以北では雨の多く夏らしくない日が続いたようです。近年、豪雨や台風などの影響で野菜の生産量や値段高騰に悩まされることが多くなりました。数日で価格が変化するときなどは、いつもは魚や肉の副食になりがちな野菜も、大切に使いたくなります。
昔から野菜の保存方法は色々とありますが、おかず味噌ともなめ味噌とも呼ばれた『金山寺味噌』も、野菜を長く楽しむためのもの。

大豆や麦と共に刻んだ野菜が入っているのが特徴で、弊社の金山寺味噌にも茄子を混ぜあわせています。他の味噌よりも、甘みが強く水分の多いのでそのままでも食べやすく、ご飯や野菜などにのせたり、お酒のアテとしてもおすすめです。

この金山寺味噌には由来の諸説はありますが、鎌倉時代の僧、心地覚心が1254年に修行していた宋から、紀州由良の鷲崎山興国寺の開山となり、近傍の湯浅(現在の湯浅町)に「径山寺味噌(きんざんじみそ)」を伝えたのが起源といわれています。

先の8月10日、農林水産省は和歌山県の『紀州金山寺味噌』を「地理的表示保護制度(GI)」の対象に追加登録しました。
長く培われた伝統的な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地の特性が、品質などの特性に結びついている産品を、登録保護していくこの制度。味噌としては、はじめての登録となりました。
和歌山の郷土料理のひとつにある「茶がゆ」にも添えられる金山寺味噌は、和歌山の醤油の起源ともいわれています。宋から伝わった技術と食料保存の思いが詰まった味噌を守り伝えていただけることは、とても有り難いことです。

まだまだ夏野菜が並んでいるこの時期。
キュウリや茄子などの夏野菜に添えてそのまま食べれば、野菜と一緒に長く食べていきたかった伝統の味に、先人の知恵が感じられるかもしれません。

『さぬきのFOOD』にて

夏の真っ盛り、うだるような暑い日が続いていますね。

先週のFacebookの方でもご案内いたしました、高松市歴史資料館での企画展『さぬきのFOOD~食に見る風土の風景~』。行かれた方はおられますでしょうか。お伝えしたとおり「さぬきのさしすせそ」の展示のなかで、弊社の味噌作りの製造方法をパネルにてご紹介して頂いております。

この企画展は「食」のコンセプトを通して、身近でありながらも知らなかった香川県の歴史や文化を切り取られています。農業・漁業で使われていた道具を通して知る歴史から、とれた恵みから作られた調味料。そこから育まれたうどんがどのように郷土料理としての「さぬきうどん」となり愛されてきたかなど、地元のものとしても興味が尽きない内容になっておりました。

なかでも普段はお目にかかることがなかなか難しい、金刀比羅宮所蔵の「象頭山社頭並大祭行列図屏風(重要有形民俗文化財)」。こちらは江戸時代の金刀比羅宮大祭にお参りに行く風景が描かれています。御神輿や五人百姓などとともに、当時のうどん屋も何軒か描かれておりました。解説くださった学芸員の方によると、江戸時代のうどん屋の看板はとても特徴的で、立ち並ぶ商店の中からお店を見つけるアイコンのようなもの。細かく描かれたなかから見つけることも、この一双の楽しみ方となっていました。

また、弊社の味噌も含めた「さぬきのさしすせそ」は、香川県の調味料メーカーの老舗ともなるお店の道具などが並んでおり、古い道具でありながら馴染み深く感じられる方もおられるのではないでしょうか。各お店の販促物やブリキの看板などもあり、一周まわってかわいらしく感じるものも。味はもちろんですが、各メーカーの先人が伝え広めていったことも、香川の味の伝承を担っているように思われました。

様々な料理が外食内食に取り込まれていき、なかなか郷土の味を食べる機会がへっている昨今。
それでも一昔前に描かれた讃岐うどんがいまも気軽に食べられるように、香川の風土が作り上げた食文化を身近に、そして長く次代に伝えていくよう、これからもお味噌をとおして貢献していきたい。改めて感じさせていただけた展示会でした。

高松市歴史資料館(サンクリスタル高松4階)9月3日(日)まで開催中です。

上海、販売紀行

先日の6月22日、高松から出発し23日(金)~25日(日)のあいだ、上海にありますシティスーパー様の売り場にて、お味噌を販売してまいりました。

今回は、今までの300gパックでの小売とは違い、弊社としても先方のお店としても初めての試み『お味噌の量り売り』にチャレンジしてきました。

白味噌・赤味噌・田舎粒味噌・さくら味噌の4つのアイテムを樽詰めにて実施。
特に白味噌は、スーパーでの新しい商品にもなります。

発注いただいたのは、白味噌が30kg、田舎粒味噌と赤味噌は20kgづつ、さくら味噌は10kgに。
お陰様で2日目の土曜日には、さくら味噌10kg分が完売いたしました。
続いて田舎粒味噌、赤味噌が他より安価と云う事もあり、ジワジワと売れつづけ、見事最終日にはどちらも完売。
白味噌は若干残ってしまったものの、それでも30kg中24kg分を販売し、初めての開催としては実に華々しく充実した結果となりました。

前回でも感じましたが、やはり上海の方には濃く甘い味付けが口に合うらしく、さくら味噌は特に固定客も付いている模様。こちらから特に商品説明をしなくても購入いただける事に感動しました。

逆に新商品となる白味噌は、まずはお試しにと少量の100gで購入するお客様が多かった印象です。
単価自体は低くなってしまいますが、お客様にとっては気軽に新しい味を試す事ができますし、こちらとしましては多くの方に直接白味噌の良さを伝えながら、さくら味噌のように気に入っていただけるリピーター獲得に最適のかたち、量り売り形式のメリットが出たのではないでしょうか。

対面販売のなかでも試食試飲として、各種のお味噌を使ったお味噌汁や簡単な料理も提供させていただきました。
使用した食材は、なんと店内にある肉や魚、野菜はもちろん調味料までも、値段に関係なく全て使いたい放題という、とても贅沢なバックアップをスーパーの御厚意でしていただけました!
日頃料理には少し不慣れな私でも、豊富な食材で美味しくお味噌汁や味噌炒め料理などを調理できました。お客様にも、なかなか好評だったのではないでしょうか。

最終日、開いて頂いた懇親会では名指しでお褒めの言葉を頂戴するなど、シティスーパー様には今回の量り売り販売を非常に喜んでいただきました。
好評を受けて、今後はお菓子や他の調味料などでも、どんどん量り売り形式を取り入れていかれたい模様。
販売いただくお客様の今後の方針の礎や先駆けに、弊社のお味噌と私自身が携わらしていただけましたのは、非常に光栄であり心に残る感動すべき販売になったと思います。

変化楽しい、豚汁話

ゴールデンウィークもおわり、夏を思わせる日差しを感じる日が続いていますね。

淡々と続く日常のなか、ちょっとしたこだわりやいつもと違うモノを使うことで、すこし日々に変化をもたらすことはありませんか。
ふつうのボールペンから書き心地のいいモノを、いつものビールからクラフトビールで。平素とはちがう、ちょっとした嬉しいを感じてその日を楽しむのは、また明日につながる小さな知恵に思います。

食生活としても日頃食べる味噌汁なかでも、出てくればちょっと嬉しいもののひとつに、豚汁があるかと思います。豚肉や芋・ネギなどが味噌汁のなかから顔をのぞかせると、食欲が落ちる日でも嬉しいなぁと感じます。

この豚汁あまり知られていませんが、地域によって呼び名も具材も変化する料理なのはご存知でしょうか。

香川を含め、豚汁を『とんじる』と呼ぶ地域が多くある一方、『ぶたじる』と呼ぶ地域は、北海道などの北の地域と鹿児島などの南九州あたりが多いようです。

名前の通り豚肉のスライスを主に、ゴボウなどアクの強い野菜を加えて味噌で味付けすることは、基本的におなじですが、芋や最後のトッピングにそれぞれの地域に特徴をあたえています。

北海道から関東あたりまではジャガイモを使う所が多く、地域が被る関東から関西、中四国までは里芋を、関西から九州では、里芋と二分してサツマイモを使用しています。ジャガイモの産地北海道から、名を表す鹿児島のサツマイモなど、北から南へその土地に合った芋を使っているのが面白いところ。

北海道ではさらに、出来上がりの最後にバターを入れて風味をつけるそうです。まるでじゃがバターと味噌汁をかけ合わせたようで、一度試してみたくなりますね。
他にも、宮崎ではゆず胡椒を、島根では酒粕、高知ではショウガやミョウガをいれるなど、地域の名産を加えていて、それぞれが美味しそうに感じます。

具だくさんにすれば、主菜にもなり得る豚汁。
そこに色々な地域の具材を加えて、ひと味違った味を楽しんでみてはいかがでしょうか。

春を漬ける

肌寒い気温も薄れて、あたたかく過ごしやすい気候になってきました。
様々なイベントも開催されるこの時期は、どこかに出かけたくなりますね。

季節と共にスーパーなどに並ぶ食材も変化していきますが、弊社の商品も少しづつ出荷していく種類も変わっていきます。いまは、香川の郷土料理「サワラの味噌漬け」などに使っていただける『みそ漬け用味噌』を、時期ものとしてお出ししています。
サワラは香川の春の味を代表する魚。麦秋の頃、農村部で親戚などふるまう「春祝魚(はるいお)」など、地域文化にねざした食材です。おみやげ用にも「サワラの味噌漬け」は販売されているようです。

この味噌漬け、サワラだけでなく色々な食材を漬けて楽しまれるお客様もおられます。
マナガツオやイカなどの海鮮物はもちろん、キュウリなどの野菜や豆腐にもよく合います。また、県内の精肉店でも弊社の味噌を使って豚肉の味噌漬けを作られています。

いまの時期おすすめなのが、タケノコ。
灰汁抜きをしたタケノコを一晩漬け込み、グリルやオーブンなどで焼きます。タケノコの風味を味噌が引き立てる春の味に。他に空豆や菜の花も、新鮮なものを少しゆでて漬ければ、おいしそうです。

芽吹きの春、季節の味ともに味わう味噌漬けを1度ご賞味ください。