月別アーカイブ: 2017年2月

色冴える、自然のめぐみ

日差しがだんだんと暖かくなってきました。
まだまだ寒さは感じますが、春はもうすぐそこまで来ているかの様です。
朝から開始する味噌作りにも、水の冷たさのちょっとしたゆるみを感じられるようになりました。
作業が終わり並んだ味噌樽は、澄んだ空気のなかで静かに醗酵を待ち、天井や梁に長年染み込んだ麹菌なども、成熟を促していきます。どこかその姿に神聖さをみてしまうのは、人の力はここまでとして、後は自然の力にお任せしているからかもしれません。

この寒さ厳しい時期に作る味噌は「寒仕込み」といい、家庭では昔から一年分を作っていました。1月からの寒い時期に仕込み、時間をかけてゆっくり発酵をうながします。気温が下がる頃には深みがでて、おいしい味噌になります。

凍るような冷たい水を蛇口から出したときに、澄んでいると感じるときはありませんか。
この水が寒仕込みには重要な要素。
二十四節気にある「小寒」と「大寒」の間を「寒」や「寒中」といい、その期間中に汲んだ水を「寒の水」といわれます。一年で最も質が良い水とされ、食材が腐ることなく保存できると昔から伝わっています。
水の冷たさは染色にも関係し、こちらは「寒染め」として無地や黒などの染め上りを美しく仕上げてきたようで、寒中に染められた鯉のぼりなどは、色あせがしにくいといわれています。

味噌も成熟が進むと濃い色に変化していきます。自然の力に昔からの知恵と時間をかけて、作り出された味噌の美味しさ。
この絶妙なバランスをかけあわせた味噌を『紅白合わせ味噌』として年末より発売しています。昨年に仕込んでじっくり熟成し旨味を引き出した赤味噌と、そこに糀の香りと上品な甘味の白味噌を調合させました。

味噌樽を確認するたびに小さな変化をみせる色は、ぬるむ水のように仕上がりを待つ心に密やかに送ってくれる、味噌からの美味しさの合図です。

あん餅雑煮点描

早いもので年が明けて一ヶ月がすぎました。
もうお正月の気分からは遠くなりましたが、今年も三が日にはおせちやお雑煮を召し上がった方も多いのではないでしょうか。

香川のお雑煮といえば、あん餅の入った雑煮が有名。
白味噌にあん入りの餅は全国的にみてもめずらしいかと思います。
先日色々な方とお話しする機会があり、時節がらお雑煮についてどのように召し上がるか聞いてみたところ、さまざまな食べ方を教えていただきしました。

あん餅で雑煮を食べられる方は、香川の真ん中あたり中讃地域で多く、三豊市などの西讃地域では白丸餅が多いとのこと。またあん餅を食べる地域でも、個人的に甘いものは苦手と食べない方もおられます。反対に、県外から来られた方がはじめは躊躇したものの、今ではあん餅でなきゃとおっしゃる方も。

具材となる大根や人参は一般的なようですが、他にいれる食材はさまざま。
豆腐や玉ねぎ、トッピングに青のり(お好み焼きにつかわれるあおさを細かく切らずに使います)や鰹節、葱などバリエーションに富んでいていました。

味噌は、比較的地域にかかわらず白味噌を使われるようで「1月中はずっと白味噌で味噌汁なのよ」とメーカーとしてもうれしいお話もいただきました。その後も、家では白餅が残るからぜんざいで食べますや、客人が多い年は2日にあん餅がなくなって慌てたこともなど、雑煮のあれこれ話に花が咲きました。

あたり前に感じていた作り方も地域で違うように、各家庭ですこしづつ変わる味。
おせち料理のように華やかさはないけれど、あん餅雑煮に親しみを感じている様子に、これからも白味噌を通して郷土料理を伝えていくお手伝いが出来れば有り難いことと思う機会でした。