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上海、味噌事情

あたたかな日が続いていますね。
春の陽気に誘われ、街かどの桜は今満開になっています。

先日22~26日まで、中国は上海にて味噌の販売に行ってまいりました。
販売場所は、いつもイベントをさせていただいているシティスーパー様。去年の6月と同様にお味噌の量り売りや、オープンキッチンをお借りしての実演調理もさせていただきました。
何度もおじゃましていますが、国外の緊張感もありながらその土地のお客様と一期一会でお会いすることは、とても楽しい時間で心躍りました。

今回も赤味噌やさくら味噌が上海の方の好みに合ったようで、売れ行きも好評でした。また多くの方に試食いただきながら、弊社の味を知って頂くことができたと思います。

いままでも何度か訪ねている上海で、やはり気になるのは現地の味噌事情。

短い滞在期間ながらこれからの参考にと、お世話になった現地の方に、通訳さんを通してお話させていただくと、豆と米、塩で発酵させた味噌のようなものは、ないとのこと。中国料理の味噌といえば、XO醤に、えびや海鮮醤、ゴマを使ったものを指すようです。

似た物でありますかと重ねてお聞きすると、お店から3品出していただきました。
全て台湾からの豆豉といい、2つは日本の味噌のようなペースト状ではなく、豆の形状が残ったもので、かさかさに乾いているようです。食べ方をお聞きしますと、調理の際にふりかけながら味付けをおこなうとの事。麻婆豆腐などにもよく使用されているようです。
豆豉醤とかかれたものもあり、材料は黒大豆と塩、そして麹と酵母で発酵させたものだそう。こちらはすりつぶした形状となっています。

この豆豉は、日本には奈良時代に中国から伝わって、京都にある大徳寺納豆などが同じような製法で造られています。あまり見かけないと思っていると、日本で違う名前で伝わっていたりと、調味料を通しても昔から日本との交流を感じますね。

いま海外では日本料理がブームを終え、広く定着しているようです。
購入いただいたお客様とのやりとりや、多くみかけた日本料理店でも、少しづつ広まっていることを実感しています。
日本に伝わっていった色々な中国の調味料のように、中国のご家庭のなかでも日本の味噌が親しんでいただければと、ますます様々な場所での販売イベントに力が入ります。

白味噌と春告漁

雪の多かった冬が少しづつ遠のき、日差しに暖かさを感じます。
近くにある栗林公園の梅も、今が盛り。春がそこまで来ているようです。

春先から夏にかけて香川では、白味噌を使った料理がたくさんあります。
とくに県魚「サワラ」は春を告げる代表的な食材で、サワラの味噌付けなど、白味噌と共に郷土料理にはかかせない逸品です。いまの時期から仕込む白味噌は、ちょうどサワラの料理などにもお使いいただけるのではないでしょうか。

全国にある味噌のなかでもこの白味噌は、京都など関西が主な消費生産地域です。
他に、香川と並んで有名なのが、広島の府中味噌。

府中味噌の中心である広島県府中市は、北に良質な米と大豆の栽培地かかえた場所がら、江戸時代には生産されるようになりました。また京から安芸につづく山陽道と、石見銀山からの出雲道がかさなる交通の要衞所だったため、参勤交代などで行き交う人々の献上品として江戸にあがり、全国的に知られたようです。

この府中味噌にも、春を告げる水産品をつかった郷土料理があります。

府中市から南へ、瀬戸内海に望めば鞆の浦に行き当たります。
映画「崖の上のポニョ」の舞台にもなった鞆の浦では、特産である『鯛』で作られたさまざまな料理あり、そのなかでも古くから伝わるおみやげにあるのが『鯛味噌』
この鯛味噌は、府中味噌を使って鯛のそぼろと砂糖などと合わせた調理味噌で、そのままでもご飯やふろふき大根にあわせても美味しそうです。

「マダイ」はサワラと同じく外海を回遊し、産卵のため穏やかな瀬戸内に帰ってきます。
香川につたわるサワラ漁法の「流しさし網」や鞆の浦の漁法「鯛網」は、いまもおこなわれる伝統的な漁法。
冬の寒さが明け、待ち遠しい春を瀬戸内地域の食卓につたえてくれています。

映画のなかでもひるがえっていた大漁旗は、漁師の皆さんが掲げるあざやかな豊穣のあかし。この技術も、さまざまな郷土料理をささえる財産として、未来に残したい漁業文化です。

甘酒百花

冷え込みが厳しい日々が続きます。
全国で記録的な低温が報道され、先日は香川でもめずらしく数日雪が降りました。

寒さが堪えるこんな季節には、体を内から温めたいもの。
この時期おすすめしたいのは、弊社でも販売している甘酒はいかがでしょうか。

甘酒は麹を使ったものと酒粕を使ったものがありますが、弊社では麹のものを販売。
味噌の材料となる麹で、甘酒をお造りしています。

古くある蔵には、大正の創業当時から造ってきた味噌の味となるものが蓄積されており、目にみえない「麹菌」がお渡ししている「味噌屋の甘酒」にも含まれているのではないでしょうか。

この甘酒、日本では古くから飲まれていました。

『日本書紀』にも、甘酒の起源とされるものが記述されています。
江戸時代では、夏の水分補給、栄養補給として甘酒売りが町々を売り歩いていたそうで、夏の季語ともなっています。

昔から飲む点滴と呼ばれ、栄養が豊富なことでも知られています。
人の体では作られないアミノ酸9種類とビタミンB群、また麹菌が出す酵素が消化吸収を助けるので、幼児から年配の方にもおすすめ出来る飲み物です。

いま甘酒は、定着した塩麹に触発されたように新たな麹商品のブームとなっています。

スーパーなどでは、近年に見ないほど様々なメーカーのものが売られるようになりました。
サイズの違ったプレーンの甘酒から、ショウガや柚、フルーツが入ったもの。
砂糖がわりとして、クッキーやケーキに甘酒が入ったお菓子も、甘さひかえめで美味しそうです。
最近では、化粧品にも使われるようになりました。
古くからあるものが再度見直され、新しい形で商品になっていくのは楽しく感じますね。

4日からは立春。
寒さはまだまだ続きますが、日本古来からある甘酒で体調管理はいかがでしょうか。
また来月のひなまつりなどでも、ちいさなお子さんと甘酒での桃の節句をぜひお楽しみください。

年末のごあいさつ

年の瀬を迎え、今年もあと数日になりました。
師が走るの言葉どおり、忙しい時間をお過ごしではないでしょうか。

一年を振り返り、本年も多くのご愛顧を賜りましたこと、厚く御礼申し上げます。

また沢山のご縁にも恵まれました。
11月におこなわれました味噌講座はもちろん、6月にあった上海での販売イベントや歴史資料館での展示、ラジオにも出演させていただきました。

様々な方との交流は、感じること学ぶことが多く、何者にも代えがたく得難いもの。
ひとえに皆様のご支援の賜物と感謝いたします。

来年も味噌作りを介して、さらなる出会いと味噌と食文化の発展に貢献していければと思っております。
どうぞ皆様の新しい年が、すばらしい一年になりますよう、お祈り申し上げます。

交流深める、合わせ味噌

肌寒い日が続いています。
街並の木々は今紅葉まっさかり、あざやかな色あいが目にも楽しく感じます。

近くにある特別名勝 栗林公園でも、先週末まで紅葉のライトアップを開催されていました。
和船の夜間周遊もおこなわれ、夜の幽玄さを演出。色とりどりの中の散策は、昼とは違う世界に誘われそうです。

この栗林公園は、ミシュランガイド日本観光版で三つ星にも選ばれるなど、海外の方にもひろく知られています。最近では外国の方の来園姿も日常的に感じるほど、よく見かけるようになりました。違う国の人々とのちょっとした交流もうれしいものです。

その交流にちなんだ味噌のことわざがあるのはご存知でしょうか。

昔からの言い伝え『味噌は遠いものを合わせる』があります。
遠方の地域とで、または異なる製法で造られた味噌を合わすことで、より美味しい味噌に仕上がるというもの。

現在では混ぜ合わせた状態で販売もしている、合わせ味噌にあたります。
合わせ味噌とは、2種類以上を組み合わせて、好みの味に仕上げたお味噌。
別の呼び名で調合味噌ともいい、こちらは主に米味噌や豆味噌、麦味噌など麹の種類がちがう味噌を2、3種類混ぜ合わせたものをいいます。

全国には、風土に合わせた様々な材料と製法でつくられた、独自の味噌が点在しています。
主に関東以北では、長期熟成された塩味が強い赤色の辛口が多く、関西から九州にかけては熟成が短く甘みが増していきます。各味噌のもつクセを合わせることにより、お互いの風味を補い合ってまろやかに食べやすくなりました。

合わせ味噌は懐石料理からうまれたようで、様々な人の口に合うよう創意工夫の心が形になったもの。それは日本のおもてなし文化にも通ずると感じます。

再来年に始まる東京オリンピックなど、昨今ますます海外の方との交流が進みそうです。関係を紡いでいくことで、既存の文化に新たなコクが加わり、より豊かな深みとなれば素敵だなと思います。