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変化楽しい、豚汁話

ゴールデンウィークもおわり、夏を思わせる日差しを感じる日が続いていますね。

淡々と続く日常のなか、ちょっとしたこだわりやいつもと違うモノを使うことで、すこし日々に変化をもたらすことはありませんか。
ふつうのボールペンから書き心地のいいモノを、いつものビールからクラフトビールで。平素とはちがう、ちょっとした嬉しいを感じてその日を楽しむのは、また明日につながる小さな知恵に思います。

食生活としても日頃食べる味噌汁なかでも、出てくればちょっと嬉しいもののひとつに、豚汁があるかと思います。豚肉や芋・ネギなどが味噌汁のなかから顔をのぞかせると、食欲が落ちる日でも嬉しいなぁと感じます。

この豚汁あまり知られていませんが、地域によって呼び名も具材も変化する料理なのはご存知でしょうか。

香川を含め、豚汁を『とんじる』と呼ぶ地域が多くある一方、『ぶたじる』と呼ぶ地域は、北海道などの北の地域と鹿児島などの南九州あたりが多いようです。

名前の通り豚肉のスライスを主に、ゴボウなどアクの強い野菜を加えて味噌で味付けすることは、基本的におなじですが、芋や最後のトッピングにそれぞれの地域に特徴をあたえています。

北海道から関東あたりまではジャガイモを使う所が多く、地域が被る関東から関西、中四国までは里芋を、関西から九州では、里芋と二分してサツマイモを使用しています。ジャガイモの産地北海道から、名を表す鹿児島のサツマイモなど、北から南へその土地に合った芋を使っているのが面白いところ。

北海道ではさらに、出来上がりの最後にバターを入れて風味をつけるそうです。まるでじゃがバターと味噌汁をかけ合わせたようで、一度試してみたくなりますね。
他にも、宮崎ではゆず胡椒を、島根では酒粕、高知ではショウガやミョウガをいれるなど、地域の名産を加えていて、それぞれが美味しそうに感じます。

具だくさんにすれば、主菜にもなり得る豚汁。
そこに色々な地域の具材を加えて、ひと味違った味を楽しんでみてはいかがでしょうか。

春を漬ける

肌寒い気温も薄れて、あたたかく過ごしやすい気候になってきました。
様々なイベントも開催されるこの時期は、どこかに出かけたくなりますね。

季節と共にスーパーなどに並ぶ食材も変化していきますが、弊社の商品も少しづつ出荷していく種類も変わっていきます。いまは、香川の郷土料理「サワラの味噌漬け」などに使っていただける『みそ漬け用味噌』を、時期ものとしてお出ししています。
サワラは香川の春の味を代表する魚。麦秋の頃、農村部で親戚などふるまう「春祝魚(はるいお)」など、地域文化にねざした食材です。おみやげ用にも「サワラの味噌漬け」は販売されているようです。

この味噌漬け、サワラだけでなく色々な食材を漬けて楽しまれるお客様もおられます。
マナガツオやイカなどの海鮮物はもちろん、キュウリなどの野菜や豆腐にもよく合います。また、県内の精肉店でも弊社の味噌を使って豚肉の味噌漬けを作られています。

いまの時期おすすめなのが、タケノコ。
灰汁抜きをしたタケノコを一晩漬け込み、グリルやオーブンなどで焼きます。タケノコの風味を味噌が引き立てる春の味に。他に空豆や菜の花も、新鮮なものを少しゆでて漬ければ、おいしそうです。

芽吹きの春、季節の味ともに味わう味噌漬けを1度ご賞味ください。

包む、包まれる

だんだんと季節が春めいてきましたね。
暖かくなってくると、サワラの味噌漬けやちしゃもみなど、旬の食材と白味噌を使った香川の郷土料理が待ち遠しくなってきます。

全国にはたくさんの郷土料理がありますが、味噌を使用したものはどこか面白いものが多いなと感じます。
昔から伝わる代表的な調味料、砂糖から始まる「さしすせそ」のなかでも、味噌の形状はペースト状なのが特徴。様々な形に変化しやすいことが、上記の料理のように漬けるや和えるだけでなく、料理のバラエティにつながるようです。

そのバラエティのなかでも、味噌を包んだものと味噌で包んだもの、と違う切り口でみていくのも楽しいものです。

味噌を包んだもので代表的なものは、奈良や長野にある「ゆべし」や「柚もち」。
名称は少しづつ違いますが、くり抜いた柚に味噌などをいれたもの。軒下などで乾燥させて、お茶請けに薄く切って食べられています。和菓子のゆべしとはひと味ちがった珍味です。
東北にある「紫蘇巻き」は、お酒にも合いそうな一品。その名のとおり、紫蘇で味噌を巻いたものをつまようじに刺し、さっと焼くようで、夏の食欲が落ちそうな時期にぴったりですね。
正月に京都などで食べられる「花びら餅」も、白味噌とゴボウを白餅と薄赤い餅で重ねて包んだもの。宮中行事の「歯固めの儀式」に由来した、雅でおめでたいお菓子です。

味噌で包んだものとしては、「味噌田楽」を上げたいと思います。
全国的にある味噌田楽ですが、炉端で焼かれるものは味噌をたっぷりと塗られて焼かれ、串にささった里芋や豆腐、こんにゃくなどの旨さを、味噌の香ばしさが引き立てています。
長野の遠山郷には、特産のじゃがいも〈二度芋〉を使った味噌田楽があり、県の選択無形文化財に指定されています。
徳島の山深い祖谷地方には「でこまわし」
一番上の丸い芋を頭を〈木偶(人形)〉に見立てて、これを炭火の周りで回しながら焼く様子から名付けられました。

もうひとつ、包むといえば野趣あふれる河原での魚料理。
河川にある平たい石を焼いて、味噌で円形の土手にして魚や野菜を焼いていく豪快な調理法は、新潟の「鮎の石焼き」や徳島の「アメゴのひらら焼き 」などが有名です。野外で大勢が集まってたべる団らんは、食欲をそそりそうです。
始めはきれいに並べられた食材に味噌がしみ込んでいく頃には、集まった人の距離がぐっと縮まって、楽しい時間になっていくでしょうね。

いろいろな場所で伝わる料理には、沢山の楽しみ方が詰まっています。これからのお出かけシーズン、各地の郷土料理を目指して旅行にいくのも面白そうです。

色冴える、自然のめぐみ

日差しがだんだんと暖かくなってきました。
まだまだ寒さは感じますが、春はもうすぐそこまで来ているかの様です。
朝から開始する味噌作りにも、水の冷たさのちょっとしたゆるみを感じられるようになりました。
作業が終わり並んだ味噌樽は、澄んだ空気のなかで静かに醗酵を待ち、天井や梁に長年染み込んだ麹菌なども、成熟を促していきます。どこかその姿に神聖さをみてしまうのは、人の力はここまでとして、後は自然の力にお任せしているからかもしれません。

この寒さ厳しい時期に作る味噌は「寒仕込み」といい、家庭では昔から一年分を作っていました。1月からの寒い時期に仕込み、時間をかけてゆっくり発酵をうながします。気温が下がる頃には深みがでて、おいしい味噌になります。

凍るような冷たい水を蛇口から出したときに、澄んでいると感じるときはありませんか。
この水が寒仕込みには重要な要素。
二十四節気にある「小寒」と「大寒」の間を「寒」や「寒中」といい、その期間中に汲んだ水を「寒の水」といわれます。一年で最も質が良い水とされ、食材が腐ることなく保存できると昔から伝わっています。
水の冷たさは染色にも関係し、こちらは「寒染め」として無地や黒などの染め上りを美しく仕上げてきたようで、寒中に染められた鯉のぼりなどは、色あせがしにくいといわれています。

味噌も成熟が進むと濃い色に変化していきます。自然の力に昔からの知恵と時間をかけて、作り出された味噌の美味しさ。
この絶妙なバランスをかけあわせた味噌を『紅白合わせ味噌』として年末より発売しています。昨年に仕込んでじっくり熟成し旨味を引き出した赤味噌と、そこに糀の香りと上品な甘味の白味噌を調合させました。

味噌樽を確認するたびに小さな変化をみせる色は、ぬるむ水のように仕上がりを待つ心に密やかに送ってくれる、味噌からの美味しさの合図です。

あん餅雑煮点描

早いもので年が明けて一ヶ月がすぎました。
もうお正月の気分からは遠くなりましたが、今年も三が日にはおせちやお雑煮を召し上がった方も多いのではないでしょうか。

香川のお雑煮といえば、あん餅の入った雑煮が有名。
白味噌にあん入りの餅は全国的にみてもめずらしいかと思います。
先日色々な方とお話しする機会があり、時節がらお雑煮についてどのように召し上がるか聞いてみたところ、さまざまな食べ方を教えていただきしました。

あん餅で雑煮を食べられる方は、香川の真ん中あたり中讃地域で多く、三豊市などの西讃地域では白丸餅が多いとのこと。またあん餅を食べる地域でも、個人的に甘いものは苦手と食べない方もおられます。反対に、県外から来られた方がはじめは躊躇したものの、今ではあん餅でなきゃとおっしゃる方も。

具材となる大根や人参は一般的なようですが、他にいれる食材はさまざま。
豆腐や玉ねぎ、トッピングに青のり(お好み焼きにつかわれるあおさを細かく切らずに使います)や鰹節、葱などバリエーションに富んでいていました。

味噌は、比較的地域にかかわらず白味噌を使われるようで「1月中はずっと白味噌で味噌汁なのよ」とメーカーとしてもうれしいお話もいただきました。その後も、家では白餅が残るからぜんざいで食べますや、客人が多い年は2日にあん餅がなくなって慌てたこともなど、雑煮のあれこれ話に花が咲きました。

あたり前に感じていた作り方も地域で違うように、各家庭ですこしづつ変わる味。
おせち料理のように華やかさはないけれど、あん餅雑煮に親しみを感じている様子に、これからも白味噌を通して郷土料理を伝えていくお手伝いが出来れば有り難いことと思う機会でした。