花咲く変わり蕎麦

春を感じる季節になりました。
桜の満開情報も東京など各地から聞かれ、ここ香川でも見頃を迎えていて、どこに行こうかとウキウキとした気分になります。

お花見には、桜のほかにもう一つの楽しみもありますね。花よりだんごと言われるように、持ち寄ったお弁当や酒などの飲み物を外で食べることも、日常を離れた雰囲気にうれしく感じられます。
最近ではケータリングなどで、現地まで料理を届けてもらえるサービスもあるようです。また各地で開催されるさくら祭りなどのイベントでも、堤灯の下でならぶ、露店や屋台を見て歩くのも楽しみな一つですね。

その屋台には、さまざまな歴史や種類があります。
江戸時代初期に誕生した屋台は、天秤棒に道具をいれた箱の降り売りが基本。肩に担いで独特のかけ声で売り歩く姿は、江戸の街の風物詩ともなりました。
その中でも二八そばや夜鳴きそばなどの「蕎麦屋」は、浮世絵や歌舞伎の題材になるほど親しまれました。

江戸文化に切ってもきれない蕎麦には、味噌も大きな関係があったのはご存知でしょうか。

蕎麦をつけて食べる「つゆ」は、江戸時代の中期にはいるまで味噌から作る「煮貫」や「垂れ味噌」で食べられていました。味噌に水を入れて煮詰めたもので、その後鰹節をいれて煮詰め、最後に布で漉す際のたれる様子から、つゆの事を「たれ」とも呼ばれる由来ともなりました。

現在でも郷土料理として、味噌つゆで食べる地域があります。

長野県伊那市は信州そば発祥の地のひとつ。そのなかの高遠山間部では、焼いた味噌と大根おろし、ネギを合わせた「からつゆ」が伝えられています。蕎麦も味噌も信州の特産品、身近な食材が豊富にあったことも、長く食べられることになったのではないでしょうか。

また高遠藩主だった保科正之は、会津藩に転封する時にはそば職人などを連れていくほど無類のそば好きだったようで、会津地方にもからつゆが伝わり「高遠そば」と呼ばれています。昔ながらの宿場街、大内宿でも高遠そばが由来の「ねぎそば」として名物に。ねぎ一本を箸としてつかいながら、辛み大根の汁で食べるそうで、味もさることながら食べ方も特徴的で面白そうですね。

昔の風情が残る大内宿の近くには、日本で唯一の茅葺き屋根の湯野上温泉駅があり、こちらも桜の名勝地になっています。今年も、桜並木と古民家風の駅舎がならぶホームにゆっくりと列車が入ってくる景色を見に、多くの観光客が訪れているでしょうね。

何気ない風景に桜が咲くと、いつもの日常とは違うように、身近な蕎麦が普段とは違う食べ方になれば、どこか小さなイベントのようで楽しさを感じます。いつか味噌つゆや一本ねぎで蕎麦を味わってみたいです。